鹿児島の夏、「1階のリビングは冷房が効くのに、2階に上がった途端に空氣が重い」という感覚に心当たりはないでしょうか。
今回のケースは、築25年・木造2階建て、窓はすべてアルミサッシ+単板ガラスというお住まいです。1階9か所・2階9か所、合わせて全18か所の窓に内窓「インプラス」を設置しました。エアコンを買い替えるのではなく、熱の入り口である窓そのものを塞ぐ「まるごと断熱」という処方です。夏に室内へ入ってくる熱の約7割は窓から出入りするといわれており、ここに手を入れることで、冷房の効きにくさと2階の熱こもりの改善が期待できます。
この記事では、なぜ18か所すべてに手を入れる判断をしたのか、部屋ごとに何をどう診たのかを、Before/After写真とあわせてお伝えします。
今回のお住まいについて
なぜ「冷房を強くしても涼しくならない」のか?
このお住まいでご相談の入り口になったのは、次のようなお困りごとでした。鹿児島でわたしたちがもっとも多くお聞きする組み合わせです。
ご相談時にうかがっていた主なお困りごと
- エアコンの設定温度を下げても、夕方になると2階が蒸し暑いまま戻らない
- 西向きの子ども室が、日が傾く時間帯にいちばん暑くなる
- 階段を上がると空氣の温度がはっきり変わり、上下階で体感が違う
- 節電を意識しても、夏場の電氣代が下がっていかない
- 窓際に立つと、ガラスから熱がにじみ出るような感じがする
「冷房が効かない」と聞くと、多くの方はまずエアコンの性能を疑います。しかし、わたしたちがまず診るのは窓です。夏に室内へ入ってくる熱のうち、約7割は窓などの開口部から入ってくるといわれています。つまり、どれだけエアコンの能力を上げても、窓から熱が入り続けている限り、冷やしたそばから温められている状態が続きます。
築25年前後の住宅で多く使われているアルミサッシ+単板ガラスは、アルミが熱を伝えやすく、ガラスも1枚のため、外の熱がそのまま室内側に伝わりやすい構造です。今回のお住まいでも、日中に日射を受けた窓まわりが熱を持ち、その熱がゆっくり室内に放出され続けていたと考えられます。夕方以降も2階が暑いままだったのは、日中に建物へ蓄えられた熱が夜まで残っていたためと考えられます。
ご提案内容:なぜ「一部屋だけ」ではなく18か所すべてに内窓を入れたのか
わたしたちは窓を"売る人"ではなく、"診て、直す人"です。ご相談の内容だけを見れば、「いちばん暑い西向きの子ども室だけ」という処方も成り立ちます。実際、一部屋断熱は費用を抑えて効果を確かめられる、有効な入り口です。
それでも今回まるごと断熱をご提案したのには、現地を診たうえでの理由があります。
理由1:熱は部屋の境界で止まらないから
1か所だけ内窓を入れても、隣の部屋や廊下の窓から入った熱は、ドアの隙間や階段を通って移動します。特に階段は、暖まった空氣が上へ抜ける煙突のような通り道になります。今回、階段室(2F階段北)とトイレ・納戸まで含めて処方したのは、この「熱の通り道」を残さないためです。
理由2:鹿児島は「断熱」より先に「遮熱」が効く土地だから
鹿児島は日射が強く、夏が長い土地です。冬の寒さ対策として語られることの多い内窓ですが、鹿児島では日射熱をどう室内に入れないかが先に来ます。内窓を入れて既存窓との間に空氣層をつくると、外の熱が室内側へ伝わりにくくなり、遮熱の効果が期待できます。ガラス種別を日射遮蔽タイプのLow-E複層ガラス(表面の特殊金属膜で日射熱を反射しやすくしたガラス)にすると、この効果はさらに高まります。
理由3:補助金を使うなら、まとめて工事したほうが1回あたりの負担が軽くなるから
先進的窓リノベ2026事業は、対象製品・サイズごとに補助額が決まり、1戸あたり最大100万円まで活用できます。数年に分けて少しずつ工事するよりも、対象期間内にまとめて施工したほうが、ご自身の負担額を抑えやすくなります。ただし予算の消化状況によって受付が終了する場合があるため、時期は事前にご相談ください。
診療所からの一言「全部やりましょう」と最初から申し上げることはありません。まず現地で窓の向き・サイズ・使い方を診て、どこから熱が入っているかを確認します。そのうえで、ご予算に応じて「今回はここまで」という線を一緒に引きます。一部屋からでも段階的に進められる工事です。
施工前後の様子(Before → After):1階
1階は、玄関・水まわり・キッチン・リビング・和室の9か所に内窓を設置しました。北側の小さな窓も対象に含めています。
① 玄関(西向き)
西向きの玄関窓は、午後の日射をまともに受ける位置です。玄関は家の中でも空氣がこもりやすく、ここが熱を持つと廊下・階段を通じて家全体に影響します。まず入り口から塞ぐ判断をしました。
② 洗面脱衣室(北向き)
北向きで直射日光は入りませんが、洗面脱衣室は湿氣がこもりやすい場所です。窓の断熱性が上がることで、冬場の結露やカビの発生を抑える効果も期待できます。夏の対策が、そのまま冬の対策にもなる部屋です。
③ トイレ(北向き)
小窓は「ここは要らないのでは」と省かれがちですが、面積が小さくても熱と冷氣の出入り口であることに変わりはありません。トイレ・脱衣所は居室との温度差が生まれやすく、冬のヒートショック対策の観点からも処方しています。
④ キッチン(北向き)
キッチンは調理の熱が加わるため、夏はもっとも過酷になりやすい場所です。窓からの熱侵入を抑えることで、調理中の暑さの底上げ分を減らす効果が期待できます。
⑤ キッチン(東向き)
東向きの窓は朝の日射を受け、午前中のうちに室内を暖め始めます。「朝からもう暑い」という感覚の一因になっている窓です。開閉のしやすさを確保するため、引違いタイプで納めています。
⑥ リビング(東向き)
ご家族が長い時間を過ごすリビングは、優先度のもっとも高い部屋です。冷房を使う時間が長い=熱が逃げる/入る時間も長いため、ここへの投資は電氣代の面でも効きやすいと考えられます。
⑦ リビング(南向き・掃き出し窓)
南向きの掃き出し窓は、家の中でもっとも面積の大きい熱の出入り口です。面積が大きいぶん効果も出やすく、まるごと断熱の中でも中心になる1か所です。出入りの動線を妨げないよう、既存窓との間隔とクレセントの位置を確認したうえで納めています。
⑧ 和室(南向き)
和室は障子や畳との取り合いがあり、枠の見え方が氣になる部屋です。インプラスは枠色を選べるため、和室の雰囲氣を大きく崩さずに納めることができます。日本建築は呼吸する空間だと考えているわたしたちにとって、和室の見え方は妥協したくない部分です。
⑨ 和室(西向き)
1階で西日を受けるもう1か所です。西向きの窓は太陽高度が低い時間に日射が奥まで差し込むため、庇(ひさし)では防ぎきれません。ガラス自体で日射を反射させる考え方に切り替える必要がある向きです。
施工前後の様子(Before → After):2階
今回のご相談の中心だった2階です。子ども室・寝室・洋室に加え、階段・トイレ・納戸まで9か所すべてに内窓を設置しました。
⑩ 子ども室(南向き)
2階の南面は、日射を受ける時間がもっとも長い面です。勉強や就寝で長時間過ごす部屋のため、日射遮蔽を優先したガラス構成としています。
⑪ 子ども室(西向き)— 今回いちばん暑かった窓
「2階の西向き」は、鹿児島の夏でもっとも条件の厳しい組み合わせです。西日の直射に加え、2階は屋根からの熱の影響も受けます。この1か所だけでも先に処方する価値があると考えており、ご予算の都合で段階施工になる場合は、わたしたちはここから着手することをおすすめしています。
⑫ 階段(北向き)— 熱の通り道を塞ぐ
居室ではないため後回しにされやすい窓ですが、階段は上下階の空氣がつながる場所です。ここを断つことで、1階で冷やした空氣が階段を通って上へ逃げていく流れを抑えやすくなり、上下階の温度差の緩和が期待できます。
⑬ トイレ(北向き)
小窓ですが、2階トイレは夏に空氣がこもりやすい場所です。防音の面でも、外の音が届きにくくなる副次的な効果が期待できます。
⑭ 納戸(北向き)
納戸は人が長くいる部屋ではありませんが、夏に熱がこもると隣接する居室に影響します。衣類や書類を保管する場所でもあるため、湿氣・カビの観点からも処方しました。
⑮ 寝室(東向き)
東向きの寝室は、朝日で室温が上がり、目覚めの時間帯に暑さを感じやすい部屋です。寝室は「寝つき」と「起き抜け」の両方に関わるため、体感の変化を実感していただきやすい場所だと考えています。
⑯ 寝室(南向き)
同じ寝室でも東面と南面で熱の入り方が違うため、両方を処方して初めて部屋としての効果がまとまります。「1部屋に2つ窓がある場合、片方だけでよいか」というご質問をよくいただきますが、片方を残すとそこが弱点として残ります。
⑰ 洋室(南向き)
現在は使用頻度の低い部屋でも、将来の使い方が変わる可能性を考えて処方しています。窓工事は住みながら進められますが、家具の移動が必要になるため、部屋が空いているタイミングでまとめて行うほうが負担が少なくて済みます。
⑱ 洋室(西向き)
2階西面の最後の1か所です。ここまでで、日射を受ける東・南・西の全面と、空氣の通り道である北面の小窓まで、家全体の開口部を一巡しました。
まるごと断熱で、何がどう変わることが期待できる?
効果の感じ方は建物の構造・方位・使い方によって異なりますので、断定はいたしません。そのうえで、同様の施工で一般に期待できる変化としては、次のようなものが挙げられます。
- 冷房の効きの立ち上がり:熱の侵入が抑えられることで、設定温度に達するまでの時間や、達した後の維持のしやすさの改善が期待できます。
- 上下階の温度差:階段室を含めて処方することで、1階と2階の体感差の縮小が期待できます。
- 窓際の「モワッとする」感覚:既存窓と内窓の間に空氣層ができるため、室内側のガラス面が熱を持ちにくくなります。
- 冷房の電氣代:冷房が効きやすくなることで、同じ快適さを保つための消費電力の低減が期待できます。実際の削減額は電力単価・使用時間・在宅時間によって変わります。
- 冬の結露:夏の対策として行った工事が、冬の結露・部屋間の温度差の対策としても働きます。
- 外の音:窓が2重になることで、道路や雨の音が届きにくくなる副次的な効果が期待できます。
電氣代がどのくらい変わりうるかは、条件を入れて試算することができます。電氣代の考え方シミュレーションもあわせてご覧ください。
よくあるご質問
Q. 18か所もあると、工事は何日かかりますか。住みながらできますか。
A. 内窓は既存の窓を壊さず、室内側に取り付ける工事です。窓1か所あたりの取り付け作業自体は短時間で終わるため、住みながらの施工が可能です。ただし、窓のサイズ・数・お部屋の状況(家具の移動が必要かなど)によって日数は変わります。日程は現地調査のうえでお出しします。天候により前後する場合があります。
Q. 全部やらないと意味がありませんか。一部屋からでもよいのでしょうか。
A. 一部屋からでも効果は期待できます。むしろわたしたちは、まず「いちばんお困りの部屋」から始めることをおすすめする場合が多くあります。今回のような西向きの子ども室や、長時間過ごすリビングは、1か所目として選ばれることの多い部屋です。段階的に進めるご計画も一緒に立てます。
Q. 補助金はいくらもらえますか。
A. 先進的窓リノベ2026事業では、窓のサイズと製品の性能グレードごとに補助額が決められており、1戸あたり最大100万円まで活用できます。窓の数・サイズによって金額が変わるため、現地調査のうえで具体的な金額をお示しします。なお予算の消化状況によって受付が終了する場合がありますので、ご検討中の方はお早めにご相談ください。
Q. 窓の開け閉めが二度手間になりませんか。
A. 内窓が加わるため、開閉の操作は1手増えます。この点は事前にお伝えしています。そのうえで、ふだん開けない小窓(トイレ・納戸など)は開閉頻度が低く、負担を感じにくい箇所です。よく開ける窓については、開けやすい形状・クレセント位置を現地で確認しながら選定します。
Q. 掃き出し窓や和室でも、見た目が悪くなりませんか。
A. インプラスは枠色を複数から選べます。和室であれば木目調、洋室であれば既存サッシに近い色というように、お部屋ごとに変えることもできます。今回の和室でも、障子・畳との取り合いを見ながら色を決めています。
Q. 鹿児島だと「断熱」より「遮熱」と聞きますが、どう違うのですか。
A. 断熱は熱の伝わりを抑えること、遮熱は日射の熱を反射して入れないことを指します。鹿児島のように日射が強い土地では、まず遮熱を効かせるガラス選びが重要になります。ただし内窓は断熱と遮熱の両方に働くため、夏の対策がそのまま冬の対策にもなります。どちらを優先すべきかは、窓の向きと日の当たり方を見て判断します。
まとめ:エアコンを買い替える前に、窓を診てみませんか
築20〜30年前後の戸建てにお住まいで、「冷房が効かない」「2階が暑い」とお感じの方は、内窓による窓断熱で、冷房の効きにくさと上下階の温度差の改善が期待できます。なぜなら、夏に室内へ入ってくる熱の約7割は窓から出入りしており、今回のケースのように熱の入り口そのものを塞ぐという処方が成り立つからです。
ここまでお読みいただいて、ご自宅のどの窓がいちばん熱を入れているかは、まだ分からないかもしれません。それを確かめるのが、わたしたちの仕事です。一級建築士が現地でお住まいを診て、どこから手を付けるべきかをお伝えします。
まずは、無料の窓診断(現地調査・お見積り)から。
一級建築士が窓の向き・サイズ・日の当たり方を診て、優先順位と補助金の使い方までご説明します。
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