玄関は、家のなかでいちばん「熱の相談をされにくい場所」です。暑いのはリビングや2階だと思われがちで、玄関の暑さは我慢するものだと受け止められています。
今回のケースは、築30年・木造戸建ての玄関ドアを、LIXILの玄関ドアリフォーム「リシェント」に交換した事例です。既存の枠を活かして新しいドアを納める工法のため、壁を壊す必要がなく、1日で完了する工事です。
そしてもう一つ、お伝えしておきたい制度上の事実があります。玄関ドアの交換だけでは、補助金の対象になりません。窓の断熱改修と同じ契約のなかで行う場合に、はじめて対象となります。この記事では、玄関ドアを診るという視点と、窓とセットで考える理由をお伝えします。
今回のお住まいについて
玄関が暑いのは、我慢するしかないのか?
ご相談時にうかがっていた主なお困りごと
- 西日が当たる時間帯、玄関のドアに触ると熱を持っている
- 玄関の熱が廊下に流れ出て、家のなかまで暑くなる感じがする
- 風を通したくてドアを開けたいが、防犯が心配で開けられない
- 建て付けが悪くなり、開け閉めが重い。すきま風も入る
- 高齢の家族が出入りするので、段差と鍵の扱いやすさが氣になる
わたしたちは「熱の出入り口は窓です」とお伝えしています。夏に室内へ入ってくる熱のうち、約7割は窓などの開口部から入ってくるといわれています。この「開口部」には、玄関ドアも含まれます。
築30年前後の住宅で使われているアルミ製の玄関ドアには、断熱材が入っていないものが多くあります。アルミは熱を伝えやすい金属です。西日を受けたドアは表面温度が上がり、その熱がそのまま室内側に伝わります。「ドアに触ると熱い」という感覚は、この構造によるものと考えられます。
さらに、玄関は家じゅうの空氣がつながる場所です。廊下、階段、リビングへと空氣が流れる起点にあります。玄関で発生した熱は、そこにとどまらず家のなかへ移動します。日射が強く夏の長い鹿児島では、この影響が無視できません。
そして建て付けです。長年の使用でドアや枠が歪むと、すきまが生じます。すきまがあれば、夏は熱氣が、冬は冷氣が入ります。冷暖房の効きに直接影響する部分です。
ご提案内容:なぜ「カバー工法」で1日なのか
玄関ドアの交換と聞くと、「壁を壊す大工事になるのでは」「何日も家を開けたままになるのでは」とご心配される方が多くいらっしゃいます。
リシェントはカバー工法という納め方を採ります。既存のドア枠を残したまま、その上に新しい枠とドアを被せて取り付ける工法です。壁や周囲のタイルを壊さないため、次のような利点があります。
- 1日で完了する:朝に既存ドアを外し、夕方には新しいドアで施錠できる状態になります。家を開けたまま夜を迎えることはありません。
- 解体や産業廃棄物が少ない:壁を壊さないため、粉じん・騒音が抑えられます。近隣への影響も小さく済みます。
- 外壁の補修が不要:既存の外壁・タイルに手を付けないため、補修跡が残りません。
そのうえで、今回は次の点を優先して選定しました。
断熱仕様のドアを選ぶ
リシェントには断熱性能のグレードがあります。西日を受ける玄関では、断熱材の入ったドア本体を選ぶことで、表面で受けた熱が室内側に伝わりにくくなることが期待できます。鹿児島のように日射の強い土地では、まずこの選定が効きます。
採風タイプという選択肢
「開ければ涼しいが、防犯が不安」というお困りごとに対しては、ドアを閉めたまま風を通せる採風タイプという選択肢があります。ドアに組み込まれた開閉部から風を取り込む仕組みで、施錠したまま換氣ができます。今回のように、日中に高齢のご家族が在宅されるお住まいでは、検討する価値のある仕様です。
開け閉めのしやすさと鍵
建て付けが直ることで、開閉が軽くなります。加えて、手をかざすだけで解錠できるタイプの鍵も選べます。荷物を持っているとき、高齢のご家族が出入りされるときの負担が変わる部分です。
診療所からの一言わたしたちは窓を"売る人"ではなく、"診て、直す人"です。玄関ドアも、家の開口部の一つとして診ています。ただし、玄関ドアだけを交換しても、窓が単板ガラスのままであれば、家全体の暑さは大きく変わりません。玄関は「入り口」であって、面積でいえば窓のほうが大きいからです。順序としては、まず窓を診る。そのうえで、玄関ドアも一緒に処方するかを考える。これがわたしたちの基本的な進め方です。
施工前後の様子(Before → After)
① 玄関まわり全景
玄関まわりを引きで見た全景です。既存の枠を活かすカバー工法のため、周囲の外壁・タイル・ポーチには手を付けていません。補修跡が出ないぶん、外観がまとまって見えます。玄関は家の顔にあたる部分なので、性能と同時に見え方も確認しながら色を選定します。
② 玄関ドア(寄り)
ドア本体の寄りです。断熱材の入っていないアルミのドアから、断熱仕様のドアに替わりました。見た目には分かりにくい部分ですが、熱の観点でいちばん変わるのはここです。あわせて枠のすきまが解消し、開閉の重さと、すきま風の通り道が改善しています。
玄関ドアの断熱改修で、何がどう変わることが期待できる?
効果の感じ方は建物の構造・方位・使い方によって異なりますので、断定はいたしません。そのうえで、同様の施工で一般に期待できる変化としては、次のようなものが挙げられます。
- ドア表面の熱:断熱材の入ったドアに替わることで、西日を受けた熱が室内側に伝わりにくくなることが期待できます。
- すきま風:建て付けが直り、枠まわりのすきまが解消することで、夏の熱氣・冬の冷氣の侵入を抑えることが期待できます。
- 閉めたままの換氣:採風タイプを選んだ場合、施錠したまま風を通せるため、防犯への不安と暑さを同時に扱えます。
- 開け閉めの軽さ:建て付けの歪みが解消することで、重かった開閉が軽くなります。
- 防犯性:現行の玄関ドアは鍵が2か所ついたタイプが標準的で、古いドアからの更新で防犯面の向上が期待できます。
- 冬の玄関の冷え:夏の対策として行った工事が、冬の玄関・廊下の冷えへの対策としても働きます。
一方で、玄関ドアだけを交換しても、家全体の暑さが解消するわけではありません。面積でいえば、熱の出入り口の中心はやはり窓です。玄関ドアは「家じゅうの空氣がつながる起点を整える」処方だとお考えください。
玄関ドアで補助金を使うには、条件があります
ここは誤解の多い部分ですので、正確にお伝えします。
先進的窓リノベ2026事業では、玄関ドア単体の交換は補助対象になりません。玄関ドアが対象となるのは、窓の断熱改修と同一の契約のなかで、同時に行う場合です。加えて、断熱性能の基準を満たすドアであること、事業に登録された事業者が施工することが要件となります。
つまり、「玄関ドアが古くなったから、まずドアだけ替えたい」というご計画では、補助金は使えません。逆に言えば、窓の断熱改修をご検討中の方にとっては、同じタイミングで玄関ドアも処方するのが、もっとも負担の軽い進め方ということになります。
制度の要件・補助額は年度や予算の消化状況によって変わります。ご検討の際は、最新の要件をわたしたちからご案内しますので、まずはご相談ください。
よくあるご質問
Q. 本当に1日で終わりますか。工事中、家を空けたままになりませんか。
A. カバー工法のため、既存の枠を残したまま新しいドアを取り付けます。朝に着工し、その日のうちに施錠できる状態までお納めするのが基本です。ただし、既存の枠の傷み具合や、ドアのサイズ・仕様によっては追加の作業が必要になる場合があります。現地調査のうえで日程をお出しします。天候により前後する場合があります。
Q. 玄関ドアだけ交換したいのですが、補助金は使えますか。
A. 先進的窓リノベ2026事業では、玄関ドア単体の交換は補助対象外です。窓の断熱改修と同一契約内で同時に行う場合に対象となります。ドアの交換をご検討中であれば、あわせて窓も診させていただくことをおすすめします。窓とドアを一緒に処方したほうが、暑さ対策としての効果も、補助金の面でも合理的です。
Q. 既存のドアが引き戸ですが、開き戸に変えられますか。
A. リシェントには引き戸・開き戸の両方の仕様があり、既存が引き戸でも開き戸に変更できる場合があります。ただし、玄関ポーチの広さ、扉の開く方向、有効開口の寸法など、現地の条件によって選べる仕様が変わります。段差や手すりの必要性もあわせて、現地で確認させてください。
Q. 採風タイプは、防犯上あぶなくありませんか。
A. 採風部分は施錠したまま開閉する仕組みで、人が通れる大きさではありません。網戸も備わっており、虫の侵入にも配慮されています。ただし、外出時の長時間の開放は避けていただくようご案内しています。ご不安な点は、現地でドアの実物の仕組みをご説明します。
Q. 玄関ドアと窓、どちらを先にやるべきですか。
A. 暑さ対策としての効果を優先されるのであれば、面積の大きい窓が先です。ただし、建て付けが悪く開閉に支障が出ている、鍵が古く防犯が心配、といった事情がある場合は玄関ドアを優先することもあります。補助金の要件を考えると同時施工が有利ですので、まずは両方を診たうえで順序をご提案します。
まとめ:玄関ドアは、窓と一緒に診るのが合理的です
築30年前後の戸建てにお住まいで、「玄関のドアが熱を持つ」「開け閉めが重い」「風を通したいが防犯が心配」とお感じの方は、断熱仕様の玄関ドアへの交換で、これらの改善が期待できます。なぜなら、玄関ドアも窓と同じ開口部であり、カバー工法であれば1日で処方できるからです。
そして、玄関ドアが補助金の対象となるのは窓の断熱改修と同一契約で行う場合です。だからこそ、わたしたちは玄関ドアのご相談をいただいたときも、必ず窓もあわせて診ます。どちらから手を付けるべきか、両方を一緒に処方すべきか。それをお伝えするのが、わたしたちの仕事です。
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